ECC PLUS vol27

日本ゲーム大賞
日本ゲーム大賞2020「アマチュア部門」でECCcomp.の作品が大賞と佳作を受賞しました。ECC PLUS vol.26では、オンライン授賞式の様子と、受賞直後の喜びの声を速報記事としてお届けしましたが、今回は受賞作品の面白さや制作秘話を深掘りしてお届けします。
01
大賞受賞作
「OVEROIL CRABMEAT」
OVEROIL CRABMEAT
魔女にとらえられた主人公「カニっち」を操作し、食べられる前に脱出を目指すパズルアクションゲーム。
【ゲームのポイント】
OVEROIL CRABMEAT
プレーヤーは主人公のカニっちとフライヤーの網を操作して、足場になる食材やブロックをうまく使い、油に触れないようにゴールをめざします。油にふれてしまうとゲームオーバー。カニっちが一瞬で天ぷらになり、魔女に食べられてしまいます。
【制作秘話インタビュー】
比嘉さん 谷口さん 上田さん
チーム名「CRAB」
谷口さん(写真:中央)
[チームリーダー/プログラマ]
ゲーム開発エキスパートコース ゲームプランナー専攻[4年制]4年生
(兵庫県)川西北陵高等学校出身

上田さん(写真:左)
[ディレクター/アーティスト/レベルデザイナー]
ゲーム開発エキスパートコース ゲームプランナー専攻[4年制]4年生
(大阪府)北かわち皐が丘高等学校出身

比嘉さん(写真:右)
[アーティスト]
ゲーム開発エキスパートコース ゲームCG専攻[4年制]3年生
(沖縄県)那覇高等学校出身
――ゲーム全体を通してのこだわりポイントを教えてください
上田さん
上田さん:一つは「ゲームとしてのおもしろさ」です。キャラクター操作とフィールド操作の2つのモードを切り替え、ゴールを探す過程をいかに楽しんでもらうかにこだわりました。キャラクターや足場を動かして進む…というゲームはよくあると思うんですが、フィールドの枠組みそのものである網も上下左右に動かせることで、考えられる組み合わせが増えるんです。

谷口さん:もう一つは「ユーザビリティ」ですね。上田さんが言うように、ゴールに至る道を考えるというのはパズルゲームの醍醐味なんですが、その時間が長すぎたり、失敗してゲームオーバーになったりするのは、やっぱりストレスではあるんですよ。そこを不快にならないようにするための工夫が、一番こだわったところです。
谷口さん
例えばカニっちが食べられてゲームオーバーになるシーンを、ちょっとユーモラスな演出にしてクスッと笑ってもらうとか。リスタートまでの時間をできるだけ短くするとか。操作性の面でも新しいアクションが出る時には常に説明を出して、ユーザーが迷わないようにしました。
――それぞれの担当分野においてのこだわりや苦労した点は?
比嘉さん:個人的には背景を作る方が得意で、キャラクター作りに苦労しました。実はカニっちも元々はエビだったんですよ。天ぷらになるっていうとエビかなって。でも、どうもデザイン的に締まりがなかったので、上田さんに相談して。上田さんが書いてくれたラフを元に3Dに起こしました。
比嘉さん
一番こだわったのは魔女のアニメーションの部分ですね。専門ではないので他のゲームを見たりして勉強しました。ただ立っているだけでなく、カニっちの様子を見ているように顔や体を動かしたり、あくびをしたり、ユーザーが見ていて楽しくなるような動きを心がけました。

谷口さん:カニっちが食べられるシーンは、アニメーションとプログラミングが密接に絡んでいるんです。アニメーションの方で魔女が口を開けている時間、閉じている時間を比嘉くんから聞いて、それに合わせてカニっちを動かすようにプログラムを組むんですが、なかなかタイミングが合わなくて、初期のころは、魔女の口が閉じているのにカニっちが口に突っ込んでいってしまう…みたいな失敗もありました。何度も二人で調整を重ねて、なんとか今の形に仕上げられました。
OVEROIL CRABMEAT
プログラミングの面では、フライヤーの動きと連動して足場やブロックが動く時の挙動を制御するのがなかなか大変でした。網にぶつかって押されたら、ブロックがその方向に移動するというのは、物理的には普通のことなんですけど、プログラミング上はそうじゃなくて。一つひとつ自分でプログラムを制御するのが大変でした。
比嘉さん 谷口さん 上田さん
上田さん:テーマの音を「油のはじける音」と受け取って、まずは油を使ったゲームにしようと決めました。最初はスマホでのプレイを想定して、スマホを傾けた方向に油がかたよって、それでステージを攻略していくようなアイディアが浮かんだんですが、ちょっと操作が特殊過ぎて実装は難しいかなと。そこから3人で相談しながら2週間ぐらいで企画をまとめていったんですが、その期間が一番大変でした。自粛期間中の直接集まって話ができない状況下で、お互いの表情や納得感が見えないなかでの進行は初めての経験だったので…。

比嘉さん:あと全員が意識したのは、作品の世界観を統一することと全体の完成度を高めること。デザイン的には背景にこだわりすぎてキャラクターが浮いてしまわないようにとか。グラフィックはもちろん、サウンドやオープニングムービーも含めてユーザーに世界観を感じてもらうことを意識しました。審査ではその点が評価されて嬉しかったです!
02
佳作受賞作
「ウォーターキャリー」
ウォーターキャリー
降り続く雨とバケツにたまった水をうまく誘導して消火する、物理シミュレーションパズルゲーム。
【ゲームのポイント】
ウォーターキャリー
火元とバケツの位置を見極め、バケツの底が抜ける前に、適切な形の木材を適切な位置に配置することが攻略のポイント。使用する木材には費用が発生し、ステージごとに予算が決められているので、いかに少ない手数でクリアできるかなど、やりこみ要素も満載です。
【制作秘話インタビュー】
上窪さん 中川さん 林さん
チーム名「雨天決行」
中川さん(写真:中央)
[チームリーダー]
ゲーム開発エキスパートコース ゲームプランナー専攻[4年制]3年生
(大阪府)大阪暁光高等学校出身

林さん(写真:右)
[プログラマ]
ゲーム開発エキスパートコース ゲームプランナー専攻[4年制]3年生
(大阪府)阪南大学高等学校出身

上窪さん(写真:左)
[アーティスト]
ゲーム開発エキスパートコース ゲームプランナー専攻[4年制]3年生
(大阪府)高石高等学校出身
上窪さん 中川さん 林さん
――ゲーム全体を通してのこだわりポイントを教えてください
中川さん:テーマの音から「雨の音」「水がはじける音」「大量の水が流れている音」を連想し、3つの音をパズル要素に組み込んだ点は、他のチームにはない特徴になったと思います。また、当初、雨はただの演出だったんですが、雨の一粒一粒にも反応する仕様にしたことで、リアリティが増しました。
――それぞれの担当分野においてのこだわりや苦労した点は?
上窪さん:今回はデザインを担当しましたが、本職はプランナーなので「遊びやすさ」「見やすさ」の視点からデザインを考えました。例えば、背景の家や雲は2Dにして、ユーザーがさわれる木材やギミックは3Dにすることで直感的に操作方法が理解できるようにしています。
上窪さん
提出期限ギリギリのタイミングで、バケツの中に溜まった水の見え方を改善するために、ライティングを変更したことによって、木材の色やテクスチャーを一から調整し直したのは本当に大変でした。
林さん
林さん:後半に出てくるギミックで、重さによって回転する水車があるんですが、これも実はかなり苦労しました。水車の形のままだと歯車の間に水が入り込む演出がプログラムできなくて、上窪くんに歯を1枚ずつ作ってもらって組み合わせているんです。また、丸い粒を組み合わせて水を表現しているので、バケツに水が溜まる様子や底が抜けて流れ出す様子、地面に広がって消えていく様子などを、粒が地面に当たって消えるまでの時間で制御しています。自然な水の動きに見えるよう調整するのが難しかったですね。
そのほか、ユーザーに対してはマウスだけですべての操作ができるようにしたり、制作陣に対してもゲームエンジンの操作画面を調整して作業の効率を高めたりといった工夫もしています。
中川さん
中川さん:ディレクターとしてこだわったのは「ゲームのテンポ感」と「やり込み要素」です。ステージが上がると新しいギミックが出てくるんですが、初めて登場するステージでは絶対に新しいギミックを使わないとクリアできない設定にしています。ユーザーに新しいギミックの「練習ステージ」を用意することで、自然な流れで以降のステージに進んでもらえます。

このゲームは適当に木材を置いても、あるいは偶然の組み合わせでもクリアできてしまうんですが、使用する木材の費用とステージごとの予算を決めることで、「最少の手数でクリアする」というやり込み要素を追加しました。審査員の方から「中毒性がある」と評価してもらえたのは、まさに狙い通りです!

今年の2チームの快挙によって、ECCcomp.の日本ゲーム大賞(アマチュア部門)連続入賞記録はなんと7年に!受賞した先輩方も最初はみんな初心者でしたが、2~3年で全国レベルの実力を身につけています。みなさんもECCcomp.で日本ゲーム大賞に挑戦してみませんか?

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